日本の科学者  Vol.48 No. 2      2013 2 1日発行 付録

 

 

 

 

 

 

 北海道支部ニュース

  (No.342)

   

   

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「村」社会と「はだかの王様」(岡田弘)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「住民とともに」を貫かれた科学者―神山桂一先生を悼む(福地保馬)・・・・・・・・・・・・ 2

新年講演・交流会・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2

JSAの現状と課題(沼辺明博)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3

【科学談話室】北海道の乗合バス活性化への取り組み(浅妻裕)・・・・・・・・・・・・・・・4

 

「村」社会と「はだかの王様」

北海道支部代表幹事 岡田弘

 東日本大震災から早くも二年になろうとしている。この二年間に、様々なものが見え始めた。日本中をうろつきまわっている妖怪どもの姿である。日本とは果たしてこんな程度の国だったのだろうか?「王様ははだかだ!」とどうして叫ばないのだろうか?

 災害列島日本では、自然災害はある程度やむを得ないとみなす者がまだ少なくない。しかし、断じて違う。確かに地震・津波・噴火・台風などの自然現象の発生自体は止められない。だが、被災は社会的な脆弱性を理解せず、向かい合うべきリスクから目をそらした時に甚大となって襲いかかってくる。歴史や経験はそれを示してきた。人がいないところで、自然災害は起こらない。

 三陸田老町での大津波の死者率は、明治83%、昭和20%、平成6%と低下してきた。一方、釜石市の小中学生は99%以上が助かった。実態を無視したマニュアルや建前は破綻してしまった。身を守った人々は、マニュアルや建前にこだわらず、自分の両眼でしっかり実態を直視し、自分の頭で考え行動したのだ。

 大災害は新たな時代を生み出す。火山災害では、1902年のプレー火山の火砕流が、火山学誕生を促し、1985年のルイス火山の融雪泥流が、科学的解明を何に使うべきかを教えた。最近約30年間で、備えと直撃回避行動で、20万人余が世界で助かっている。2000年有珠山の死傷者ゼロも、長年のさまざまな軋轢を乗り越えた本音の協働による賜物である。

 原発事故も、状況は似ている。災害はないものだという、嘘の二度塗りを再び唱え初めた者たちがいる。原点に帰れ。根本から考え行動しよう。2年近くも原発に頼らずやってきたではないか。嫌なことは嫌とはっきり言おう。今ならば夢と希望と平和を築く道を歩むことができる。信頼を失った科学の真の再生への道筋がある。

 

定年退職される会員の皆さま:3ページの「お願い」文をご覧下さい。

 

「住民とともに」を貫かれた科学者―神山桂一先生を悼む

北海道支部代表幹事 福地保馬

 昨年10月29日に、元・支部代表幹事の神山桂一会員が突然亡くなられました。

 神山先生には、日本科学者会議の全国・北海道支部の役員を長年にわたって担って戴き(1981年-1986年・支部事務局長、1988年-2008年・支部代表幹事、1992年-1995年・全国幹事、2009年-・全国参与)大きな貢献をされたばかりか、公害環境問題に関する委員会活動(公害研究員会、原発問題研究員会、千歳川放水路問題検討委員会など)の中心として奮闘して戴きました。

 1970年代・公害大発生の時期は、日本科学者会議も組織を挙げて、住民とともに、住民の立場に立つ研究活動をきわめて活発に行った時期でした。わたしが、神山先生と出会い、科学者会議で、ご一緒に活動をさせて戴くようになったのもこの時からです。―伊達火力発電所建設に絡む環境問題、苫小牧東部開発の係る環境アセスメントの検討、栗山町でのクロム鉱滓による土壌汚染問題、上磯町の石油精製工場拡充計画に対する住民依頼の調査活動、道内各地での教育研究集会への関わり、岩内(泊)原発建設問題、北海道科学シンポ公害分科会の開催、千歳川放水路建設問題等々、毎週のように支部事務所に集まって熱い議論を交わしたり、道内各地を飛び回ったことなど、先生とともにした活動の様子が思い出されます。これらの活動を通して、神山先生の「住民とともに」という信念に感化され、科学者・専門家としての姿勢を学んだのは私一人ではなかったでしょう。

 最近は、お会いする機会も少なくなっていましたが、先生が先頭に立ってやっておられた「循環(くるくる)ネットワーク北海道」の活動やお住まいになっていた北広島市での環境・ゴミ問題や平和について、市民の力を結集する運動の様子を聞くにつれ、先生は、「住民とともに」を生涯貫かれておられる科学者だと、敬服していました。

 先生の信念を受け継ぎ、引き継ぐべく、研鑽をしてゆきたいと考えています。長年ありがとうございました。ご冥福をお祈りいたします。

 

☆☆新年講演・交流会☆☆

  

北海道支部では、新年にあたり以下の様な講演・交流会を企画しました。支部の会員の皆さまはもちろん、それ以外の方々にも多数参加していただきたいと思います。

講演者 松崎道幸氏(深川市立病院・内科部長)

演題 「福島と低線量被ばく―最新の知見」

松崎先生は、「日本の科学者」2013年1月論文において「がんリスクは10ミリシーベルトでも有意に増加」を発表されています。主として、その内容を話していただきます。

日程 2月2日(土)

講演会16:00-17:30

交流会18:00-20:00

場所 北海道クリスチャンセンター5階チャペル

      (札幌市北区北7条西6丁目、電話011-736-3388)

交流会は札幌駅北口の居酒屋を予定

  参加費 500円(講演会)、交流会は4000円程度を予定

  主催 日本科学者会議北海道支部

  参加申し込み 同支部

(メール jsa-hokkaido@mc6.sings.jp、電話/ファクス011-707-2299)

 

                                                   

JSAの現状と課題

 全国常任幹事 沼辺明博

今、憲法・税制改悪、震災の復旧・復興、防災と原発、学術・教育・大学の危機等、JSAが取り組むべき課題が山積しています。

 しかし、その一方でJSAの財政は深刻な状況となっています。その最大の要因は、1990年には9000名を超えていた会員が2009年には半減し、収入が大幅に減少したことにあります。そのため、第43回定期大会(2010.5)で「会員5000名の早期回復をめざすJSA活動活性化募金」を3年間行うことを決め取り組んでいます。この募金と過去の積立金からの繰り入れにより財政を維持し、院生会員に対する補助や各種シンポジウムの開催等、活動の活性化を図っています。この結果、毎年200~300名あった会員減にようやく歯止めがかかりつつありますが、増勢に転じるところまでには至っていません。

 「活性化募金」も本年度で終わり積立金も底をつけば活動も低下し、会員の減少に拍車のかかることが予想されます。

 JSAは、専門を超えた唯一の学際的学術団体としての様々な課題に積極的な役割を果たしており、その役割は益々重要となっています。

 若手・女性研究者、大学や試験研究機関の研究者のみならず、日本科学者会議の活動に支持・協力してくれる広範な方々に働きかけ、JSAの活動の強化と各種課題の解決に向け、会員の拡大にご協力ください。

 今、退会を考えている方はいませんか。

 このまま会員の減少が続けば、早晩、「日本科学者会議」は消滅してしまいます。JSAの活動を維持・支援する意味からも、退会を考え直していただけませんか。

 JSAのホームページには、多くの情報が掲載されています。是非訪れてください。

会員のページへは、

 

定年退職される会員の皆さま

会員の継続を是非お願い致します

北海道支部事務局長(代行) 江見清次郎

 2012年度末で定年退職を迎えられる会員の皆さま、どうもお疲れさまでした。これまで日本科学者会議の会員として、何かとお世話になったことに対して感謝申し上げます。

 退職後も会員として継続して活動をしていただきますようお願い申し上げます。現在科学者会議は財政的に厳しい状況にありますが、会員を継続していただくことで、会の財政基盤を安定させ、ひいては科学者運動の発展にもつながります。

<班に所属している会員の方で継続していただける場合>

○一般的に個人会員となり、「日本の科学者」や「支部ニュース」などを直接支部よりお送りする事になります。

○個人会員になっても、支部幹事や大会代議員になることが出来ます。

○札幌には、退職した会員を中心にした「第3水曜の会」という集まりもございます。

班に所属している方は、班の世話人あるいは支部事務所(本「支部ニュース」1ページをご参照ください)まで、継続の有無と、継続していただける場合は、新しい連絡先をお知らせ下さい。なお、特別会費制度(失職、傷病等の特別に困難な事態に至った会員の負担軽減のため、申請に基づいて、会費を一般会費の半額に減額することができる制度)もありますので、会費の納入が困難な場合、利用することも可能です。 

 

 
 

 

 

【科学談話室】

 

北海道の乗合バス活性化への取り組み

浅妻裕(北海学園大学班)

 

乗合バスは、地域社会を支える重要な役割を担っている。さらに、近年の高齢化社会に関する問題、地球環境問題、中心市街地の疲弊など地域経済に関する問題などを背景として、筆者には乗合バスの社会的役割はますます高まっていると思われる。

 ところが役割の高まりと相反し、バス事業者の経営環境は総じて苦しい。運賃を据え置く事業者が多い中、輸送人員の減少によって運賃収入が減少している。経常収支率が100%を割り込む状況が続き、特に地方部での低迷は深刻である。収入が減少する中で、人件費等のコストカットを行い、自治体からの補助を加えて、大幅な経常収支率悪化を防いでいるのが現状である。地域公共交通のサービス水準が低下することが懸念され、路線廃止などの形でそれが現実のものとなっている地域も少なくない。この影響を被るのは高齢者や障がい者などの移動制約者である。「移動権」を保障する交通基本法(案)の理念に沿って、この状況を改善する必要がある。

 そのような中、今年に入り、北海道内のバス事業の取り組みが注目されている。

まず、帯広市に本社を置く十勝バスが、40年ぶり増収を達成したということが頻繁にマスメディアで紹介されている。赤字が続くこの業界では快挙といってよい。「どぶ板」作戦という、バスに「乗らない人」に乗らない理由を聞いて回るという極めて地道な営業活動を行ったことが快挙をもたらした。営業活動の結果から、乗らない人々はバスに「不安」を感じていたことがわかったという。そこで不安を取り除くためにバスの乗り方を路線図に書き入れたり、目的施設とバス停の関係を明確にした時刻表を作成したりした。地道な営業活動であるが故に効果を把握しにくい、または従業員の営業活動のモチベーションが上がらないと思われるであろう。しかし、十勝バスでは最初に「白樺通19条」という特定のバス停をターゲットにセールスを行い、成果を見えやすくすることでこの課題を乗り越えた。そして、そこから他のバス停でも取り組みが広がっていたのである。これは全社的な取り組みといえ、ある報道では運行部門の部長までが営業活動を行っている様子が放映されており驚いた。

 一方、今年の10月からはニセコ町にて、それまでの「循環バス」に代わって「デマンドバス」が走り始めた。デマンドバスとは、小規模な需要しかない場合に、利用者の需要(予約)を集約した形で運行するバスのことをいい、利用希望者は電話などで希望時間などと合わせて予約する。走行ルートはその都度決定される。つまり、バスとタクシーの中間に位置する公共交通機関といってよいだろう。一般的にはデマンドバスは既存路線バスとの競合を避けるため、路線バス区間外の設定となっていることが多いとされるが、ニセコ町の場合はほぼ全域をカバーする。マスコミでも滑り出しは好評と紹介されており(朝日新聞、2012年1月3日)、これによりニセコ町が負担する運行経費が1,700万円から1,500万円ほどに削減される見込みである。

このように、足元では公共交通の再生に向けた様々な取り組みが行われおり、今後も新たな取り組みが期待されるが、交通財源はいずれにしても必要である。移動権保障の観点から、自家用車などの自動車利用の費用負担を適切な水準に改めることでその確保を図るといった国家レベルでの施策が求められている。