JSA 

北海道支部ニュース

   

      No. 277   2005. 1.24

 

 

 

 

 

 

 

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新年のご挨拶                                   1

2004年度第3回支部幹事会のお知らせ                         2

北海道科学シンポジウムの準備状況について               2

科学談話室「今時の若者は」と言う前に....組織が生き続けるということ    

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新年のご挨拶

北海道支部事務局長 江見清次郎

 

 

 支部会員の皆様、2005年明けましてお目出とうございます。今年もよろしくお願い致します。

 昨年4月から国立大学は国立大学法人となりましたが、政府は来年度予算で国立大学授業料の値上げを打ち出していますので、庶民はますます大学に通うのが困難になるおそれがあります。また昨年は、憲法及び教育基本法の改正(改悪)の動きが急になってきました。これに対して「九条の会」が全国各地につくられ憲法九条を守る運動が大きく広がっています。北海道支部もこのような動きと歩調を合わせて共同の取組を行いたいと思います。

 さて、北海道支部の昨年の活動を振り返ってみますと、9月にフォーラム「国立大学の法人化で大学をどうする」を開催しました。この問題は引き続き取り組むべき問題ですので、「大学問題勉強会」のようなものを継続的に開けないか検討しています。今年度の北海道科学シンポジウムは開催が遅れているのですが、PCB処理をテーマにして室蘭での開催を準備中です(今号の別稿記事をご覧ください)。支部財政問題については、会員減少傾向にあるのでこれを打開することが必要ですが、新たな収入増と支出構造の見直しも検討してきました。今年はその具体化に取り組んでいくことになりますので、会員の皆さまご協力よろしくお願いします。本年2月号の「日本の科学者」特集「北海道における自然エネルギーの現状と課題」は、北海道地区(支部)が協力して完成させたものです。福地編集委員の編集後記にもありますように、北海道自然エネルギーセンターの大友会員にお骨折りいただきました。

 今年の新たな活動として、電子メールによる会員への情報発信や会員間の交流の活発化などを考えています。後者に関しては会員からの話題提供に基づく研究例会のようなものをできないかと模索しております。


2004年度第3回支部幹事会のお知らせ!

 

 第3回JSA北海道支部幹事会(拡大幹事会)を下記の通り開催します。お忙しい折とは思いますが、各班の幹事の方はご出席ください。幹事の方が出席出来ない場合は、代理の方の出席をお願いします。

 個人会員・幹事以外の方々も積極的にご参加していただき、ご意見等をお聞かせ下さい。

 

  日時 200536日(日)9:3014:30

  場所 北大工学部社会工学系第二会議室A151(工学部正面玄関入り1階左手奥)

  報告 支部活動報告、班・委員会等活動報告

   議題 

   1.北海道科学シンポジウム

   2.支部財政問題

   3.支部創立40周年行事

   4.憲法問題

   5.その他(大学問題、支部大会日程など)

 

 

北海道科学シンポジウムの準備状況について

 今年度の科学シンポについて、現在準備を行っている状況についてお知らせします。

 第2回支部幹事会などで検討した結果、テーマについては室蘭でのPCB廃棄物処理問題について行うことが決まってきました。そのため室蘭工大班の会員と室蘭の「PCBの安全性を考える会」と相談しながら準備を進めることとなり、12月4日室蘭に神山代表幹事と私が出向き、相談を行いました。その後、支部公害委員会及び常任幹事会で報告内容・報告者について検討し、室蘭の会員と相談しながら、次のような形で決まりつつあります。次号の支部ニュース(3月下旬発行予定)で正式な開催要領をお知らせしますので、ご覧ください。(事務局長・江見)

 

日程:2005年4月17日()

場所:室蘭工業大学学生会館

テーマ:PCB廃棄物の処理

報告:

(1)国のPCB処理計画(日本環境安全事業(株)に依頼予定

(2)PCBの毒性(福岡支部・安東会員)

(3)室蘭工業大学の先生からの報告

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〔本の紹介〕

・「GUIDEBOOK 研究の方法」

  日本科学者会議編/税別1600

  リベルタ出版

  目次:

  1.2年間でよい修士論文をまとめる技法

  2.大学院生の知られざる悩み

  3.科学とは何か、研究とは何か

  4.良い論文には方法論が必要

  5.社会の中の科学

・「第15回総合学術研究集会予稿集」

  第15回総合学術研究集会実行委員会編集

  A4版2段組、436ページ、1500

   (送料1冊の場合310円、10冊以上まとめて注文の場合無料)

  日本科学者会議のホームページ(hppp://www.jsa.gr.jp)に目次と概要が載っていますので参考にしてください。

  

〔最近の支部常任幹事会の話題〕

・第7回(2004.12.15

第3回支部幹事会、北海道科学シンポジウム、支部事務所インターネット接続、財政対策、支部ニュースNo.277 ほか

・第8回(2005.1.19

 北海道科学シンポジウム、支部研究例会、財政対策、支部ニュースNo.278 ほか

 

━━ 科学談話室 ━━

「今時の若者は」と言う前に....組織が生き続けるということ

        北海道大学大学院工学研究科 安住和久

 年末大掃除のゴミを正月開けに出した。市では資源ゴミ分別の詳細なマニュアルを配布しているが,一見紙に見えるプラスチックやラミネート包装などの複合材はもはや普通の人には識別すら困難である。これは資源回収・リサイクルを既存の製造・流通システムに適応させた結果発生した問題であり,国民が分担しているゴミ出しの隠れたコストはかなりなものだろう。過適応のもたらすシステムの複雑化は社会の随所に見られる。自家用車では性能向上や利便性のために50個程度のコンピュータチップを搭載し,それぞれエンジンやセンサを制御している。全てのチップが首尾一貫して動作しなければ自動車として正常に機能しないため,ソフトウェア開発工程は相当複雑になっており,個人や街の自動車整備工場ではもはや修理不能である。あたかも自動車という生物が現代社会に適応して複雑化を遂げ,多くのリソースを吸引しているようにもみえる。

 進化とは適応の一形態であり,往々にしてそれは複雑化の過程をたどる。自らを環境に適応させ繁殖した結果,環境との相互作用が強まって環境を改変し,変質した環境にさらに自らを適応させるフィードバックループを形成する。最もダイナミックな例は太古の地球大気を酸素雰囲気に変えて有害な紫外線を遮断するオゾン層を形成し,海洋から陸上に進出した生物の歴史である。結果として,現在の地球は平衡からおおきくずれた状態を維持し,活性な酸素呼吸をベースとした複雑なエネルギー代謝システムを内蔵した大型陸上動物が繁殖している。しかし進化の過程は絶滅の歴史でもある。天災や環境変化により先住者が絶滅あるいは個体数を減らして場所を空けなければ新参者が入り込む余地が無い。

 ニートといわれる働く意志のない若者が増えており,新聞等でその原因について様々に書かれている。成熟社会は既存の人間により進化・複雑化され,最適化されたプロトコルが内蔵されている。新参者が一人前のポジションを得るには,この老成した世界に適応しなければならない。幼体が自らのポテンシャルを発揮するためには自由な空間が必要だが,社会に自由な隙間はすでになく,あらたな空間を作るための飛躍したアイデアとエネルギーを持つ個体はごく一部である。教育という名の長期適応プロセスを強いられてきた学生たちが常に「正答が欲しい」というレスポンスをみせるのも,自然に対する見方ではなくプロトコル(既存の価値観)を植え込まれた結果である。そしてこの複雑化された適応過程に追従できない個体が大量発生しつつある。

 日本はさながら老人病(「組織の指導者層が高齢化したまま、円滑な世代の交代が行われず、人材の若返りが阻まれ組織の健全性が失われていく様」とググれる)の様相を呈している。その先にある過適応と複雑化の果ての「死滅」を逃れるには,システム内部に継続的成長(すなわち継続的滅亡)を組み込むしかない。光は電場と磁場の生死をくり返して飛び続け,生物は有性生殖と死を獲得して進化を加速する道を選び,企業も分社・統合(有性生殖)や時にはリセット(倒産・起業)をくり返している。大学でも様々な組織改革が繰り返し行われているが,自然科学の本質まで掘り下げた議論は未だ見たことがない。大学にも社会にも,自然に習って生死のメカニズムを意識して組み込むことが必要なんじゃないか?

 昨年の台風では北大でも多くの倒木があったが,自宅付近の山の中では日の差し込むようになった森では若木たちがようやく成長の機会を得て喜んでいるようにも見えた。

                         ━━━ 科学談話室終わり ━━━

 

 

編集後記 

予定より遅れましたが、1月中に発行でき新年の挨拶がまだ新鮮です。

科学談話室の原稿等投稿原稿があればお寄せ下さい。

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