JSA 

北海道支部ニュース

   

      No. 276   2004. 11.30

 

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台風一過「夏の学校」

地球温暖化予測シミュレーション

1回全国常任幹事会に出席して

石炭・エネルギー全国シンポジウムin釧路

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 台風一過の「夏の学校」

                    北海学園大学大学院博士後期課程 多田州一

 

 

JSA「夏の学校」は、私にとって他大学の若手研究者や大学院生と交流を深める貴重な機会となった。

実際のところ、大学院というのは極めて狭い社会である。特に、私のように、学部、修士、そして博士後期とずっと同じ大学で学んできた者にとっては、日常のほとんどがそこでの先生方や院生の人たちとのお付き合いになりがちである。

今回、縁あって「夏の学校」に参加し、そこで自分と同年代の他大学の人たちと2泊3日一緒に行動することで、院生生活及び研究上のさまざまなことについて意見交換ができたことは私にとって大きな収穫であった。

しかしながら、万事順調というわけではなかった。出発の日、私は、北海学園大学大学院博士後期課程工藤貴子さん、同大学院研究生倉田知枝さんと一緒に「夏の学校」に参加すべく、札幌(千歳)から東京(羽田)まで飛行機で移動し、そこから列車に乗り換えて開催地の栃木県日光へと向かったのだが、私たちの東京到着後まもなく、台風22号が本州を襲った。

飛行機は欠航となり、列車は運休した。激しい豪雨が私たちのすぐ背後から迫ってきて、やがてその勢いの中に呑まれることになったが、その日の夕方、間一髪日光へと辿り着いた。(台風は1日目夜に日光を通過し、さらに北上していったのだが、2日目以降も天気は終始曇天であった。)

「夏の学校」の活動には、1日目夜の「各自の研究紹介」のところから参加することになった。2日目は足尾銅山の散策と坂巻幸雄氏の講演会、3日目は「院生同士の悩み交換会」という流れで、限られた時間ではあったが、新鮮な体験をさせてもらった。特に、足尾銅山に関しては、かつて小学校時代に国語の教科書で田中正造について読んだことが記憶にあったが、やはり実際に現地を自分の目で見て、自分の足で歩いてみることで、銅山、そして銅山の町・足尾について理解を深めることができた。また、私は、学部時代以来中国語を学び、大学院進学後は中国経済を研究対象としてきたこともあって、中国人強制労働の跡地である「中国人殉難烈士慰霊塔」のある坂を登りながら、これからの日中関係について考えたりもした。

率直に言うと、今回、同大学の2人を除いて全て初対面であったため、当初は不安な気持ちにかられたことも否めない。しかし、夜の宴会を通して、その不安は瞬く間に解消された。気が付いた時には、皆さんとざっくばらんに話をしていた自分がいた。また、参加者の中に1人中国人留学生が混じっていたことも意外であったが、中国を研究している私にとっては嬉しいことでもあった。ただし、残念ながら時間的な制約もあり、全ての参加者とゆっくり話をすることができなかったが、これは致し方ない。

私の在籍する大学は、9割以上が北海道出身であり、かつその大多数が札幌市とその近郊の出身者で占められている。そのため、他の地域の人たちと話をする機会があまりない。そこで、私は学部時代以来、狭い人間関係に固執せず、できるだけ多くの人たち(外国人を含む)と接触するように心がけてきた。実際、私は決して社交的な性格だとはいえない面もあるのだが、それでも今回の「夏の学校」に参加して得るものは大きかったと思っている。

最後に、「夏の学校」参加に際してご尽力下さった浅妻裕講師(北海学園大学)、佐藤克春実行委員長(一橋大学大学院博士後期課程)をはじめお世話になった皆さんにお礼申し上げる。

 

 

 

 全国「夏の学校」が、10月9-11日栃木で開催されました。支部事務局から院生のいるいくつかの班に呼びかけたところ、北海学園大学班会員の紹介で同大大学院生が3名参加されました。3名とも非会員の方でしたが例年通り旅費補助の募金を呼びかけ、北海学園大の115,000円を含めて合計180,900円が集まりました(他に北大理、工、農、札学院大、北農センター、北見工大、支部事務所)。ご協力頂きました会員の皆様どうもありがとうございました。(事務局長)

 

 

 

わかり易い

  「地球温暖化予測シミュレーション」の話?

                       —地球温暖化問題勉強会第2報—

 

 

 200473日にスタートした「地球温暖化問題勉強会」の第1回目の記事は支部ニュース274号に紹介しましたが、828日(第2回)、102(3)と続きます。参加者は35名で、「地球温暖化問題の現状の総合的認識、その問題点の把握と今後の方向」「地球温暖化を予測するとは?」などですが、なんとか今後も続きそうな雰囲気です。

 「地球温暖化を予測するとは?」の話題提供者は、「地球温暖化予測シミュレーションの科学的内容と問題点」をとりあげ、「1.気象研究所の場合、2.大気大循環とは? 3.気候モデルとは? 4.気候の数値シミュレーションとは?」の順序で勉強結果を紹介しており、現在2の半ばにあります。まだまだIPCC(気候変動に関する政府間パネル)のモデルには至らず、かなり専門的な内容を含むこともあり、参加者の「中学生にもわかる説明を」という要望に答えるのはなかなか大変のようです。

 「地球温暖化問題の現状の総合的認識」では、「IPCC3次報告書」の内容紹介から始めています。これはIPCCの公式HPでみることができますが、英文で統合報告書約400ページ、第1作業部会(科学的根拠)1000ページ、第2作業部会(影響、適応、脆弱性)1000ページ、第3作業部会(緩和)700ページと、3000ページを超すようなものです。勉強会では、その内容把握のために英文(和訳付)目次の作成に掛かっていますが、章・節・小節の目次で100ページを超えそうです。

 これには理・工・人文・社会などの分野の専門的知識も必要ですが、できあがると、知りたい内容が何処にどの程度あるのかインターネットでも容易に把握でき、授業などで「地球温暖化問題」をとりあげる場合にも便利な資料になりそうです。

 更に、JSA公害環境問題研究委員会の「環境展望」の内容紹介や、1980年代前半の「寒冷化へ向かう」という気候論議などがありました。

 次の第四回目は今年1211()1012時、支部事務局で、これまでの続きと気候

変化の歴史(過去数十万年程度)の概略などについて議論する予定ですが、目標の「シンポジウムや市民講座」へはまだ時間がかかりそうです。

 勉強会へ参加希望の方は、資料準備の都合もありますので、事前に事務局までご一報下さい。                             (文責:清野 政明)

 

 

 

 

40期第1回全国常任幹事会に出席して

                                千葉 正喜

 

 

1023日と24日に「全国常任幹事会」が東京で開かれ、支部から千葉が出席しました。

今回の幹事会では、いつものように多く報告と議論されましたが、特に報告すべきことは、憲法問題についての取り組みの具体化が進んだことです。一日目の夜には、「九条の会」事務局員の渡辺治氏(一ツ橋大学教授)から「改憲をめぐる情勢にいかに立ち向かうか?」という問題提起の講演を伺いました。そして、科学者会議の特色を生かした取り組みをしようと、次の二点決めたことでしょう。

(1)「憲法九条フォーラム」を全国的に

 開催していくこと

(2)「9条科学者の会」の活動をバック

アップすること

 

北海道でも、適当な内容で「憲法九条フォーラム」を計画し、実施の具体化をしていきたいと考えています。それに対しては全国から支援が得られることになりました。

また、これと並行して「9条科学者の会」の活動を広げることもなりました。

事務局報告の中に、会員数と会費納入状況がありましたが、前納支部が多い中、いくつかの会費滞納支部の一つに北海道支部が含まれていています。

 なお、幹事会終了後に、研究企画部会議があり、そこで北海道支部から申請のあった「石炭・エネルギー全国シンポジウムin釧路」を取り上げられ、科学者会議主催とすべきことになりました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「石炭・エネルギー全国シンポジウムin釧路」

 

朝10時に人車(トロッコ)に乗って、1.2キロほど斜坑のもぐり、海底から250メートルのあたりで、人車を降りてから、更に1.6キロほどゆるい傾斜の坑内を歩いて、たどりついたところが最新鋭の自走ドラムカッターで石炭を掘り進む切端。20人ほどのシンポジウム参加者が見ることが出来た採炭現場でした。今なお年間70万トン採炭を続けている釧路コールマインを後に、国内最後の炭坑「釧路コ-ルマイン」の長期存続を実現するため、釧路市交流プラザに移動して、「石炭・エネルギー全国シンポジウムin釧路」に参加しました。

2004年11月13日、午後1時半から始まったシンポジウムは、昨年の「石炭・エネルギーシンポジウム」を上回る130人の参加者で、熱気にあふれていました。参加者の中に長崎や大阪からはるばる釧路まで来られた方もおり、まさに全国シンポジウムに相応しい規模と内容でした。今回のシンポジウムの趣旨と釧路での開催の意義を主催者代表の「日本最後の炭坑の長期存続を求める会」八木靖彦氏が述べ、炭坑の存続を提言した学術会議の活動を紹介した「技術政策研究会」の中島篤之助氏が開会の挨拶を述べられました。引き続いて、基調講演を地球科学研究所専務取締役の本島勲氏と、慶応大学大学院理工学研究科の石川孝織氏が行いました。本島氏は、エネルギーの八割を輸入している日本にとって200億トンの埋蔵量がある石炭が自主的エネルギーとして極めて重要であることを強調されました。また、石川氏はベトナム、中国から研修生を受け入れて、炭鉱の技術、特に保安技術の支援・普及を行うことの重要性を訴え、釧路コールマインのアジア・コール・テクノロジーセンターとしての存続を強く求めました。

その後、本島、石川両氏に、渡辺昂氏(エネルギー・環境を考える会)と山田大隆氏(北海道産業考古学会)をパネリストに加え、パネルディスカッションが行われました。山田氏は短い時間の中で、釧路コールマインの存続の道筋を幾つか紹介し、日本最後の炭鉱の保存が生きた技術継承の上で如何に大事であるか強調されました。また、渡辺氏は「ドイツでは、自動車税を使って、釧路炭より1.5倍、炭価が高い自国の石炭を発電や製鉄に利用している。そのドイツで、かつて問題だった酸性雨による黒い森の問題も日本の排煙脱硫装置の技術を用いて今や完全に解決しており、石炭を古い、汚いとして国内の石炭を切り捨て、エネルギーを海外に依存する日本のエネルギー政策を変えなければならない」と訴えました。会場から質問や意見、また、地元の意見や率直な気持ちを交換する十分な時間がなくなり、用意されていたシンポジウムの声明文を討論することが出来なくなったのは大変残念でした。しかし、シンポジウムの大きな成功については、多くの参加者が確信し、次の運動への大きな希望を与えてくれました。                      (加藤幾芳記)

 

 

 

訃報 

本会会員で元小樽水産高校教員の境一郎さんは、本年11月23日なくなられました。75歳でした。謹んでおくやみ申し上げます。

 

 

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